彼女が泣いた夜

少し前、泣きながら夜道を歩く女の人とすれ違いました。年齢はたぶん私と同じか、少し上。小柄で、きちんとした格好をした、きれいな人でした。人目を気にすることもなく、ただただ悲しそうに涙を流して歩く彼女のことをとてもかわいい人だと思ったし、こんな風に泣けるのだから、彼女はきっと大丈夫だろうという気持ちになりました。

そのときにTwitterでも少し書いたのだけど、わたしは悲しい時には盛大に悲しがるのがよいと思っていて、それはなぜかというと15歳の失恋には15歳の失恋の、20歳の挫折には20歳の挫折の、30歳の別れには30歳の別れの悲しさというのがあって、その悲しみはたぶんもう2度と訪れることのない悲しみなのだから、ちゃんと味わっておくほうがいいと思うからです。

どうせ時間が経ったら覚えていたい悲しさだって忘れるし、消えてほしくない傷だって癒えてしまいます。それが救いでもあるし、時には腹立たしく思うときだってあるのだけど、どちらにせよちゃんと悲しんではじめて弔える気持ちというのがあるのだと、そんな気がします。

彼女を見たのはもう1ヶ月ほど前のことですが、今でもときどき、あの女の人はもう笑っているかなぁ、今頃はごはんをおいしく食べられるようになっているかなーと、考えます。それで、でも私は彼女じゃないからまたすぐに忘れます。