手袋は探さない

一昨日の夜、手袋を落としました。

え?まだ手袋つけてたの?と思われるかもしれませんが、つけていました。自転車通勤なので夜帰るときに気温が低くなって、手が冷たくなるのが嫌だからです。だけど一昨日の夜、さすがにこいでるうちに暑くなって、途中で脱いで上着の左右のポケットにそれぞれ片方ずつ突っ込んでおいたら、いつのまにか右のポケットが空になってました。あそこで落としたかも、と思い当たる場所はあったし、そこは気づいた場所からそれほど遠くなかったのですが、私はそのまままっすぐ家に帰りました。

私には昔からこういうところがあって、ものに執着というのがありません。ほしいものは我慢できないくせに、手に入れたものがなくなることには無頓着で、それがどんなに大事なものでも、どんなに間抜けな理由でそれが失われてしまったとしても、案外平気で忘れてしまって、ケロリとしているのです。それどころかむしろ、なくしたことで新しいものに出会えるチャンスを掴んだような気になって喜んでいるような節もあります。


こんな風にして30年近く生きてきたので、実際わたしの手元には長く持ってきたものというのがほとんどありません。今部屋をぐるりと見渡したところ、10年以上持ち続けているものは無印良品のペンケースくらいしかありませんでした。18歳の頃、ボールペンのインクが漏れてその時使っていたペンケースがだめになったため、近くのコンビニで買って中身を入れ替えた、なんの思い入れもないものです。その時はまさかこのペンケースを30歳になるまで使っているなんて思いもしませんでした。いくつになっても大事に持っていようと20歳の記念に買ったダイヤのピアスは、その後2年ほどしてあっさり旅行先のホテルの排水口に流れていったというのに、皮肉なものです。
でもまぁ、人生なんて往々にしてそんなものなんだろうと思います。
吟味を重ねて必死で選んだものが、いつまでもわたしの近くにあるとは限らない。むしろ、何も考えずに掴んだものが長きにわたって一緒にいることになるのかもしれません。