巡る季節と春のごはん


菜の花と厚揚げの炊いたの、新玉ねぎのサラダ、新玉ねぎ入りつくねの照り焼き/うつわ:上から時計回りに 岸野寛 灰釉菊形皿6寸 横山秀樹 モールコップ 岡崎勉 灰釉片口鉢 古谷宣幸 種子島向付

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仕事帰り、落ちきらない陽がうす赤く山際を染めているのを見て、随分日が長くなったなと思った。暑くなったり寒くなったり花を咲かせたり散らせたりしながら季節はぐんぐん進んで、新緑の季節はもう目の前にある。

春の食材をたっぷり食べたいと思いながらも品数の少ない一人暮しの食卓ではそれもままならず、気がつけばうすい豆も食べないままにナスやキュウリや茗荷などスーパーの棚にじわじわと夏が進出してきてしまっている。それでもなんやかんや作っては食べている今日このごろ。

ちなみに、最近作ったのはこんなの。


そら豆の翡翠煮/うつわ:横山秀樹 鉢

あさりと水菜の潮汁/うつわ:猪狩史幸 盛椀

筍ごはん/うつわ:岸野寛 灰釉飯碗


先日、店にきた小さな男の子が私のことをいたく気に入ってくれて、私の腰にぴたりと張り付いたまま離れようとしなかった。小さくてむくむくした手や、絹糸みたいに細くなめらかな髪、つるつるした頬を赤く染上げる血管がかわいい。
「初恋かなー?」とその子のお母さんが笑ったので、それを受けて私も笑う。男の子は私のブラウスの裾をぎゅっと握る。更にかわいい。今年31歳になる私でよければ、存分に恋したまえという気分になる。そして、あなたもいつか本当の恋をするんだよ、と思う。

手も髪も頬も何もかも、これからぐいぐい大きくなってもう二度と今のサイズには戻らないし、私のブラウスの裾をちぎれんばかりに握るその小さな手はじきに誰かの手を引くようになるのだろう。

日々、冴えていく木々の緑。
変わらぬ季節の巡りに心励まされ、けれど時間は二度と戻らないのだと強く思う。