いのちの星


お母さんの手もだいぶ年取った感ある


帰り道、西に向かって自転車を漕いでいくと明るい星が視界に入ります。宵の明星。冬の夜空で最も強く輝く金星。


高橋源一郎の5歳になる息子は、輝く星を見て「いのちの星が燃えているね」と言ったのだとか。アンパンマンに出てきたセリフの引用らしいのだけど、わたしは子供にこんなこと言われたら涙ぐんで力いっぱい抱きしめてしまうかもしれません。小さい子供は、なんであんなに爛々と燃えているんでしょう。不思議。


小学生の頃、視力が落ちてきた私にお医者さんが毎晩星を数えるようにと言いました。庭先で星を探す私に、父が毎回差し出したのは双眼鏡で、双眼鏡を使って星を見たって視力はよくならないので、私は結局眼鏡を作ることになりました。
眼鏡と双眼鏡ごしに見た星は、明るさが一定のリズムで強くなったり弱くなったりしていて、小学生の私には星がどくどくと脈打っているように思えました。星にも寿命があると知ったのはその少しあと。そりゃそうだと思いました。そりゃそうだ。だって、星はあんなに力強く鼓動しながら生きているんだもの。


うちの犬は最近よく寝ます。前からよく寝るけど、もっと寝るようになりました。よく考えると、今年で8歳になるのでもう折り返しなんですね。
犬のお腹に手を当てると、すごい速さで心臓が動いているのがわかります。ぐだぐだ寝てるだけのくせに、こんなに一生懸命心臓を動かす必要があるのだろうか。だらりとソファで横になる犬を見ながら、ビデオを買おうかな、とぼんやり考えて、そんなに急がなくていいからねと心の中でつぶやきました。