夏の夕焼け/ゴマだれそうめんと茄子の豚肉巻きフライ

夕焼けがきれいに見える場所を教えてほしいと言われて、ちょっと困った。わたしは、夕焼けをきれいに見ようと思ってどこかに出かけたことがないからだ。そういうタイプの感動は偶然訪れるほうが素敵だと思うからで、大学生の頃、男の子に夜景が見えるポイントや夕焼けがきれいに見えるポイントに連れていかれては、しらじらとした気分になっていた。たぶん、夕焼けを見に行こうと遠くに連れて行ってくれる人じゃなく、ふと見上げた夜空に浮かぶ月がきれいなことに気がつける人が私は好きなんだと思う。


先日、土曜日に昼ごはんを家でとろうと思ったのだけど、冷蔵庫はほとんど空っぽだった。汗で張りつくシーツの不快さに負けて、ベッドからはい出たのが12時すぎ。ちらりと目をやったベランダは夏の日差しを受けギラギラと光っていた。あるものでなんとかするしかない。

と言っても、本当に何もないので仕方なくそうめんを茹でることにした。茹でるだけじゃあんまりなので、すり鉢でごまを摺ってごまだれを作る。じつは、この前すり鉢を新しく購入したので、使いたくて仕方なかったのだ。

そうめんのほかに、冷蔵庫に茄子1本と豚のしゃぶしゃぶ肉4枚が残っていたので使うことにした。茄子を4等分して豚肉を巻きつけ、塩・胡椒。あとは衣をつけてあげるだけ。絶対に失敗がない組み合わせに調理法。夏のフライは妙においしい。



そうめんをすすりつつ、夕焼けのことを考えていたら、家でごはんを食べたがらなかった昔の彼のことを思い出した。おいしいレストランをよく知っていたけれど、茄子の旬は知らなかったあの人。彼とわたしがどうしても合わなかった理由が、今になってわかったような気がした。うまく説明ができなかっただけで、自分にとって大事なことは何か21歳のわたしも知ってたんだなぁ、とぼんやり思った。