これは土楽の口付黒鍋で七草がゆ作ったときの写真。おかゆおいしかった…


だいぶ前の話になるけれど、テレビで関東で大雪が降ったというニュースを見ながら、京都にも降ればいいのにと思っていました。その日、京都の気温は今冬最低を記録したのに、薄灰色の雲が覆う空からは点々と雨粒が落ちてくるだけで、つまらなかったのです。索漠とした冬の景色は嫌いではないのだけれど、ふっくらとした雪景色のがずっといい。そういえば、雪景色は室内から見たら街が真綿に覆われたようでむしろ暖かそうに見えますよね。

冬の京都は降雪はないけれど毎日苛烈に寒いので、暖をとれるようなものばかり作って食べています。3年目になる土楽の片手土鍋はいよいよこれなしには越冬できない存在となりつつあって、12月に入ったころからコンロの上に常駐しています。

仕事が終わるのが19時頃で、そこから自転車を飛ばせば帰宅は19時15分。体重を増やさないためには20時には夕飯を摂り終わる必要があるので、部屋着に着替えたらすぐにキッチンに向かいます。15分で調理を済ませなければ20時に間に合わない。

鍋に水をはり、昆布を一切れとすりこぎでたたいた1片の生姜、年末に人からもらった日本酒を適当に放り込む。それを火にかけたら具材の準備。豆腐、水菜、きのこ等々適当に冷蔵庫にあるものを切って、鍋が沸騰したら火の通りにくいものから順に入れていく。たまに、最後に溶き卵をまわしかけるときもあります。

柚子胡椒、ポン酢、塩にごま油、練りごまを麺つゆで溶いたものなど、味のバリエーションは無限にあるから、飽きません。具だって毎日違うのだし、たまには肉類が入ることだってあります。この前は父が持ってきてくれたカニまで入って大変豪華でした。

煮えた野菜は熱くて、飲み込むと胃から末端へじわじわと熱が拡散していきます。視界の端にはおこぼれを期待する飼い犬が目を爛々と輝かせながらおすわりをしているので、鍋の中にネギが入っていなければ少しだけあげたりして。

1人と1匹。時々、3LDKのマンションの1室にそれしか生命がないというのが不自然なことのように感じられます。本棚とシーズン外れの服が置いてあるだけの部屋なんて、本当はないほうがいい。北に面したその部屋はとても寒くて、部屋と廊下の扉をぴったりと閉めた上で暖房の効いたリビングにいてもそこから冷気がのびてくるような気がします。
犬と一緒とはいえ、やっぱり1人で暮らしているのはつまらない。すぐに終わってしまう晩ごはんも。この寂しさにいよいよ耐えきれなくなったら、結婚して東京に行こうかなぁ。積雪10cmで右往左往するテレビの中のこの街へ。あーでもやっぱり、あんまりイメージがわかない…。