寝かせるうまさ/鮭のハラミ(二夜干し)

「ラブレターをうまく書くコツはね、夜中に書いて一晩寝かすことだよ」
とびきり文章のうまい友人が、昔、お酒の席で言いました。「あぁ、わかる」彼の説明を待つまでもなく、私の胸にはすとんと理解が落ちてきました。
夜中に書く文章は、熱を持ちすぎます。ひとりよがりで、みっともなさがあちこちに散らかっていて、なんとなく押し付けがましい感じ。だから、書いたあと一晩よく寝て、次の日また読み返して、感情的に書き散らした部分を取り除き、とりまとめ、推敲をするのです。熱いばかりじゃ想いは届かないっていうのは、バンコク共通の片恋のセオリーです。たぶん。
さてさて、時間を置くといいのは、何もラブレターだけとは限りません。お肉に魚、野菜、きのこ類…塩をしたり干したり漬けたり、方法はいろいろですが、寝かしておくとなんでも旨味が増していいものです。例えば、鮭のハラスは塩をすりこんで風通しのいい場所に二晩(一晩でも)つるしておくと生臭さが抜け、身がしまって、そのまますぐに焼いて食べるよりも味わいが深まります。先日作ったときには、少し塩を振りすぎてしまったので、塩抜きしてからグリルで焼いたのですが、これ以上ない素敵なお酒の肴になってくれました。ちなみに、ハラスは脂がきついので、大根おろしをたっぷり添えるのが個人的なおすすめです。
とびきり新鮮な食材があれば別だと思うのですが、そうでないならちょっと寝かせてみるのも悪くないと思います。それに、寝かせている間に、台所に干したアイツをどう調理しようかと思いを巡らすのもまた楽しくて。考えあぐねた結果、結局一番シンプルな調理法になったのですが、それもまたラブレターと同じかもしれません。


そして鮭は皮の部分を残しておいて、カリカリに焼き直してお茶漬けにしてみたり。ウマウマいー!